『灰色の犬』が面白い

  • 2016.03.18 Friday
  • 08:06
JUGEMテーマ:読書

『灰色の犬』福澤徹三(光文社)

 

 この物語には、3人の主人公がいる。

 片桐誠一。警部補。情報漏えいの犯人扱いされて左遷されて以来、完全に出世街道からは外れ、上司に疎まれる一方、幹部の栄進のための違法捜査の片棒を担がされるなど、灰色の警察官生活をおくっている。

 もう一人は、誠一の子供、遼平。大学は卒業したものの定職につけず、パチンコにはまり込んでお決まりの転落コースを歩み続けている。父親とは感情が大きく隔たったままだ。

 3人目はやくざの中堅幹部、刀根剛。理事長補佐などと肩書きだけは立派だが、上の幹部や稼ぎのいい下のものからは軽くあしらわれ、一向に芽が出ない。経営しているラウンジや居酒屋からのあがりは少なく、歯医者の治療にびくびくしている小心者だ。

 片桐誠一は、自分なりの捜査の信念を持っているが、上司は一向にそれを評価せず、鬱憤はたまるばかり。遼平は、闇金にがんじがらめにされ、半同棲の女性からも裏切られてどうにも救いようのない泥沼にはまり込んだまま。そして刀根も、片桐の情報提供者(やくざの仲間からは「犬」扱い)になって見返りを求めたもののうまくいかず、窮地に立たされる。

 これって3人の転落物語かと思うほど、作者はじっくりとそれぞれの日常を描いていく。

 ところが、3人の軌跡が、あるとき1点に収れんしていく。警察とやくざの癒着が警察上層部から中堅幹部まで蝕んでいる実態が次第に明らかになる。片桐は職をかけてその犯罪を暴こうと挑んでいく。やくざの親分から煮え湯を飲まされた刀根も、片桐に協力するという奇妙な成り行きに。偶然、犯罪者たちの会話を聞いてしまった遼平が父親の窮地を救うために渦中に飛び込む。ひ弱な3匹の犬が巨大な敵に立ち向かう。

 最後はもう、事態が急展開し、流れを追うのに忙しい「痛快活劇」の様相になった。

 片桐は腐敗した上司の拳銃で撃たれるが、一命を取り留める。遼平との親子の絆も回復し、爆発に巻き込まれた刀根もどこかで生き延びているらしい。

 ということで最後は大団円なのだが、細部のリアリティもあいまいにしない丁寧な描写、スピード感のある筆遣いと、なかなか楽しめる小説で、お勧めです。

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