『写楽 閉じた国の幻』島田荘司

  • 2016.03.03 Thursday
  • 17:51
JUGEMテーマ:読書『写楽 閉じた国の幻』 島田荘司 新潮社 2010年刊
 
 寛政6年(1794年)に突如現れ、きわめて衝撃的な浮世絵作品を残しながら忽然と姿を消した写楽については、「写楽とは誰か」というテーマでこれまでもさまざまな学者・研究者、美術史家、作家が挑んできたが、最終的に決め手となる説はいまだ確立していないと言っていいだろう。
 そこに島田荘司が一石を投じた。それも、これまで誰も発想しえなかった、ある意味無謀ともいえるような仮説なのだが、それについてはネタバレになるので触れない。
 私自身は、彼の説の当否を論じられるような知識は持ち合わせていないので、とりあえずは物語としての島田荘司の世界を楽しもうと読み始めたのだが、それでよかったのだと思う。
 物語は、写楽の謎にのめり込むちょっとさえない研究者を主人公にした現代日本のドラマと、寛政6年の江戸で写楽が登場するまでのドラマが、交互に展開するつくりになっている。写楽の正体についての、全くあり得ないことではなさそうな仮説や、そこへたどりつくまでの主人公の紆余曲折、艱難辛苦。さらに、当代の超一流の浮世絵師が写楽の作品に深くかかわっているという展開も、実に面白い。
 島田荘司にはめずらしく、殺人事件一つない小説だが、写楽をめぐる謎解きの要素もあるし、ヤマ場が勧進帳ばりになっている江戸のドラマも、ハラハラドキドキの面白さだ。
 ただ、回転ドアの事故を巡る怪しげな人々の動きや、不可思議なオランダ語の書かれた肉筆浮世絵などは、思わせぶりに提示されたものの、十分に展開されておらず、不満も残る。これについては、作者自身があとがきで、小説に書き残したことがあることを認め、いずれ『閉じた国の幻供戮鮟颪たいと言っているので、期待して待っていたい。

 
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